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vol.94 ピアノ 仲道郁代

ピアノ 仲道郁代

「Road to 2027プロジェクト」でリサイタル
「音楽における十字架」がテーマ
「ベートーヴェンのメッセージを感じます」

 ベートーヴェン没後200年に向けて「Road to 2027プロジェクト」を2018年から行っている。毎回、テーマが異なり、3年目の今回は「音楽における十字架」。演奏曲目のピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」には十字架の音形が読み取れる、と仲道は話す。
 「ワルトシュタイン」は1803年から4年に作曲された。名称はワルトシュタイン伯爵に献呈されたことに由来する。
 「演奏家は楽譜を分析するだけでなく、そこに意味を見出します。主題の同音連打は、粛々と歩んで行かなければいけない、ということの象徴と考えます。そこに下行形の音や上行形の音など縦の音のエネルギーがどう関係しているのか、と考えたときに、『音楽における十字架』というテーマができました」
 ベートーヴェンは1802年、「ハイリゲンシュタットの遺書」と呼ばれる手紙を書いている。弟のカールと弟のヨハンに宛てて、耳が聞こえないことの絶望感と芸術家として全うしたいという希望が書いてある。

ピアノ 仲道郁代

 仲道は「『ハイリゲンシュタットの遺書』は決意表明です。耳が聞こえないということは運命的に課せられたもので、人は十字架を背負わなければいけない、ということを曲で書いているのではないかと思います。人間はつらくても生きていく。それは神様から与えられた使命なのです。だから私は進んでいく、というベートーヴェンのメッセージを感じます」と話す。
 プログラムはほかに、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第22番、ショパン「2つのノクターン」、シューマンのピアノ・ソナタ第3番。それぞれの曲に作曲家各々の〝十字架〟が見出せるという。
 仲道の記者懇親会は3月半ば、ヤマハ銀座ビルのアーティストサロンで、感染防止に配慮がなされた–上で行われた。新型コロナウイルスの蔓延まんえん防止のため、さまざまなコンサートが自粛され、仲道が出演する演奏会もキャンセルになった。
 「コンサートが中止や延期になって3週間たちます。今日、皆様の前に立つのがすごくうれしい。何でかな、と考えると、私にとって人前でピアノを弾くことは、音楽で想いを伝えることの本質を確認することになるからだと思います。今度のリサイタルでお客様が会場を出るとき、一歩足を踏み出そうと思っていただけたらと思います」
 リサイタルが実現することを強く願っている。

Ikuyo Nakamichi

4歳からピアノを始める。桐朋学園大学1年在学中に第51回日本音楽コンクール第1位。ミュンヘン国立音楽大学に留学。ジュネーヴ国際音楽コンクール最高位、メンデルスゾーン・コンクール第1位。以後ヨーロッパと日本で本格的な演奏活動を開始。2018年よりベートーヴェン没後200周年の2027年に向けて「仲道郁代 Road to 2027プロジェクト」をスタート。一般社団法人音楽がヒラク未来代表理事、一般財団法人地域創造理事、桐朋学園大学教授、大阪音楽大学特任教授。
ホームページ http://www.ikuyo-nakamichi.com

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仲道郁代 ピアノ・リサイタル

5月17日(日) 14:00 サントリーホール

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第22番
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」
ショパン:2つのノクターン
シューマン:ピアノ・ソナタ第3番

※公演は新コロナウイルス感染拡大に伴い、延期となりました(日程、会場は未定)。
 詳細はジャパン・アーツ ホームページをご確認ください。
 http://www.japanarts.co.jp/