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vol.32 ジェレミー・ローレル

ジェレミー・ローレル
©Yannick Coupannec

ヨーロッパ音楽界を席巻する若き才能が来日
読売日響を指揮して鮮烈な演奏で聴衆を魅了
「音楽の魂の最も近いところに迫りたい」

  ヨーロッパ音楽界で注目される若き俊英指揮者、ジェレミー・ローレルが読売日本交響楽団に客演、交響曲第4番「イタリア」などオール・メンデルスゾーン・プログラムで、日本の音楽界にデビューした。
 「2002年のエクサンプロヴァンス音楽祭の日本公演でミンコフスキのアシスタントをしたのに続いての来日です。読売日響は非常に表現豊かで、リハーサルでも考えや音のイメージを伝えると、瞬時にフレキシブルに反応してより良い音楽にしていくことができ、喜びを感じました」
 今回の演奏、またCDでのモーツァルト、ベートーヴェンの交響曲の演奏、フランスで評判を呼んだプーランクの歌劇「カルメル会修道女の対話」など、時代様式によって奏法を変えるのはもちろん、状況に応じてモダン、ピリオドの奏法を使い分けて音楽を充実させる。
 「アーノンクールの理論を指揮者になる過程で学びました。ピリオド奏法とモダン奏法の両方を徹底的に学び、知り尽くさないと、現代の指揮者は成り立たないと。ですから、音楽に向き合った時に、モダン奏法、ピリオド奏法という対立的な意味合いで音楽を読むのではなく、ありのままに読むという取り組みをしています。私は作曲家でもあるので、音楽が本来持っている姿をいかにありのままに映し出し、表現するかが指揮者の重要な役割だと思っています」

ジェレミー・ローレル
©読売日本交響楽団

 演奏の充実には自らが設立したピリオド楽器の演奏団体「ル・セルクル・ド・ラルモニー」(ハーモニーの輪)が大きく寄与している。
 「客演で指揮する機会もありますが、そこでは、過去に客演した指揮者のやり方など伝統を踏襲する必要などに迫られ、自分の考えではどうにもならないことが多く存在し、理想としている音楽の魂に最も近いところに迫ることが難しいと感じました。そこで、自分のアイデア、解釈を実現できる場が必要だと考え設立しました。その中で成功したことを他のオーケストラに客演するときにも展開しています」
 パリでは、シャンゼリゼ劇場が拠点のオペラ上演が注目を集めているが、モーツァルト「イドメネオ」、20世紀に書かれた「カルメル会修道女の対話」などの異なった時代の作品を取り上げて評判となっている。
 「私が勉強した時代は、ピリオド奏法とモダン奏法の両方を学ばねばなりませんでした。それゆえ、バロック音楽、ルネサンス音楽が好きな一方、プッチーニやチャイコフスキーなどのロマン派の作品も愛しています。また20世紀のドビュッシーなども好きです。作曲家としても作品を発表していますが、それは様式的には現代作品です。どこかのレパートリーに固執するのではなく、これまで学んだことを生かして、幅広い音楽を演奏して行きたいと思います」

Jérémie Rhorer

1973年、パリ生まれ。パリ国立高等音楽院でチェンバロ、音楽理論、作曲を学び、エミール・チャカロフに指揮を学び、彼の助言でオーケストラ「レ・ミュジシャン・デ・ラ・プレエ」を結成。その後、ミンコフスキ、クリスティに師事。2005年、ヴァイオリンのジュリアン・ショヴァンと古楽器オーケストラ「ル・セレクル・ド・ラルモニー」を設立。パリのジャンゼリゼ劇場やロンドンのバーヴィカン・センターなどでモーツァルトやベートーヴェンの交響曲などを指揮し、鮮烈な解釈で話題を呼ぶ。オペラ指揮者としても2011年にシャンゼリゼ劇場で「イドメネオ」を指揮して大成功、13年の12月にジャンゼリゼ劇場で上演したプーランクの「カルメル会修道女の対話」(演出:オリヴィエ・ピイ)は、歌手陣の充実と相まって空の高い評価を得た。

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■ブルーレイ
プーランク:歌劇「カルメル会修道女の対話」
オリヴィエ・ピイ(演出)
パトリシア・プティボン、ソフィー・コッホ、ヴェロニク・ジャンス、サンドリーヌ・ピオー、ロサリンデ・プロウライト(以上、ソプラノ)、他
ジェレミー・ローレル(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団/シャンゼリゼ劇場合唱団
(ワーナー)082564629537

■CD
ベートーヴェン:「巨匠の誕生」
ベートーヴェン:交響曲第1番、プロメテウスの創造物、ロマンスヘ長調、歌劇「レオノーレ」より、マルツァリーナのアリア「おお、私があなたと一緒になれたら」、他
アレクサンドラ・コク(ソプラノ)
ジュリアン・ショヴァン(ヴァイオリン)
ジェレミー・ローレル(指揮)
ル・セルクル・ド・ラルモニー
(Ambroisie) AM204