モンテヴェルディ生誕450年記念で
歌劇「ポッペアの戴冠」を演奏会形式で
「専門知識がなくても楽しめます」
ルネサンスからバロック、16世紀から17世紀にかけてのイタリアの作曲家、クラウディオ・モンテヴェルディが今年生誕450年を迎える。晩年の傑作「ポッペアの戴冠」(演奏会形式)を指揮する。バロック・オペラに初めて挑む。
「演奏会形式ですが、登場人物は28、9役あります。人間のからみ方などを整理しなければいけないので、演出の田尾下哲さんに舞台構成をしてもらいます。専門知識なしで楽しめることが大切です」
「ポッペアの戴冠」は、ヴェネチアで1624年に初演されている。古代ローマの皇帝ネローネは、武将オットーネの妻ポッペアの色気の
虜
になった。皇后オッターヴィアを追い出してポッペアとの結婚を画策するが、哲学者セネカはネローネに自重するように諭す。オッターヴィアはオットーネにポッペアの暗殺を命じる。女官ドゥルジッラに変装したオットーネが剣を振り上げると、愛の神アモーレにさえぎられる。
「ポッペアとネローネが浮気をしているところから始まります。すでに事は起こっているのです。絶望的なオッターヴィアなど登場人物の個性は分かりやすく、キャラクターは一貫性があります。好きなキャラクターを探して聴く聴き方もできます。ただ、天上界の話は日本人には慣れない部分があるかも知れません。でも人間のどろどろした話よりバーチャル感があるので救いがあります」
「ポッペアの戴冠」の完全な楽譜は残っていない。歌と低音部しか書かれておらず、上演によって楽器が異なる。
ポッペアを歌う森麻季
©Yuji Hori
「アラン・カーティス版をもとにスペシャル・バージョンを作りました。今のお客様が楽しめなかったら意味がないので、私がアレンジしました。ヴァイオリン1つとっても技巧が映えるモンテヴェルディの独特の音色があります。『ポッペアの戴冠』のエネルギーは言葉から引き出されています。天上界に響きはオーケストレーションで作り出せると思います。煙幕のような響きを楽しんでもらいたい」
ヨーロッパのようになじみがないため、日本ではまだまだバロック・オペラは上演されない。
「モンテヴェルディ生誕450年は音楽業界の中でもあまり知られていません。バロック・オペラは自由で、演出家にとってもやりがいがあります。ヘンデルやリュリなど、やるべきものはいっぱいあります。この公演で今後、日本でバロック・オペラをやっていくための土壌が作れれば。普通のオペラが好きな人、オペラを見たことのない人にも来てほしい」
1981年、オランダ生まれ。東京芸術大学卒、同大学院修了。オランダ・ハーグ音楽院修了。鍵盤奏者(チェンバロ、オルガン、ピアノ)として内外の公演に多数出演。指揮者としてバッハ・コレギウム・ジャパン、読売日本交響楽団などと共演。音楽監督を務めるアンサンブル・ジェネシスでは、オリジナル楽器でバロックから現代音楽まで意欲的なプログラムを展開。調布音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー。舞台演出、作曲も行う。第18回ホテルオークラ音楽賞受賞。
モンテヴェルディ:歌劇「ポッペアの戴冠」演奏会形式
11月23日(木・祝) 16:00
東京オペラシティコンサートホール
指揮:鈴木優人
舞台構成:田尾下哲
バッハ・コレギウム・ジャパン
ポッペア:森麻季
ネローネ:レイチェル・ニコルズ
オットーネ:クリント・ファン・デア・リンデ
フォルトゥナ/ドゥルジッラ:森谷真理
セネガ:ディングル・ヤンデル
ヴィルトゥ:澤江衣里、他
■問い合わせ:ジャパンアーツぴあ 電話03-5774-3040
11月25日(土) 16:00
神奈川県立音楽堂
■問い合わせ:チケットかながわ 電話0570-015-415