©Yuji Hori
ベートーヴェンとシューベルトを2晩続けて演奏
イタリアのピアニスト、ルケシーニとデュオ
「ベートーヴェンを弾くと心が満たされます」
「はじめはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲をという話もありました。しかし、シューベルトを入れ、私もピアノのルケシーニさんも満足いくプログラムになりました。自然にこういうプログラムをやりたいと思いました」
サントリーホールブルーローズで2晩続けて、ベートーヴェンとシューベルトのプログラムを演奏する。第1夜はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第6番と第7番、第5番、間にシューベルトのヴァイオリンとピアノのための二重奏曲を挟む。第2夜はシューベルトのヴァイオリンとピアノのためのロンドやベートーヴェンの第9番「クロイツェル」など。
ピアノのアンドレア・ルケシーニは、渡辺がシノーポリ指揮ドレスデン・シュターツカペレと共演したデビュー盤(1997年)の中で、ベルクの室内協奏曲において共演している。
「イタリアでリハーサルをしてきました。ルケシーニさんのピアノはインスピレーションがわくタイプの演奏です。こちらが自由になった気がします。ベートーヴェンのソナタはヴァイオリンとピアノの対話が完全に成り立っています。ピアニストと対話しながら作品と対峙できます」
シューベルトのロンドは、1999年、ニューヨークのリンカーン・センターでのデビュー・リサイタルで弾いた思い出の曲。
「スターンさんに練習を見てもらいました。ラフマニノフとクライスラーの録音を聴きなさい、といわれました。ビブラートのかけ方など当時の奏法はロマンチックですが、本質的な表現は細かい手段を超えて伝わってきます。演奏法が変わっても、本質的なところを捉え、表現する努力を学んだと思います」
初日の1曲目はベートーヴェンのソナタ第6番、2日目は第10番。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは10曲のうち6曲取り上げる。
「シゲティの書いた本を読むと、6番と10番で完璧な演奏ができればお客さまを満足させられる、と書いてあります。どちらも一般受けするタイプの曲ではないのです。『クロイツェル・ソナタ』の初演当時の批評には、偉大でグロテスクな作品とあり、聴衆にとっては難しかったようです」
年齢を重ねるとともにベートーヴェンの感じ方は変わってきたという。
「20代のころはベートーヴェンを弾く自信がありませんでした。今も悩むことは多いのですが、20代のころの手探り状態というのはありません。ベートーヴェンは弾いていて心が満たされる作曲家の一人です。ベートーヴェンに共感し、理解が深まってきました」
東京生まれ。第50回日本音楽コンールで最年少優勝。ヴィオッティ、パガニーニ両国際コンクールで最高位。ジュリアード音楽院に全額奨学生として留学。1999年、ニューヨーク・デビュー。デビューCDは急逝したシノーポリ指揮ドレスデン・シュターツカペレとの共演によるもの。秋田の国際教養大学特任教授。第35回エクソン・モービル音楽賞奨励賞。ニューヨーク在住。使用楽器は日本音楽財団から貸与された1736年製グァルネリ・デル・ジェス「ムンツ」。
■渡辺玲子&アンドレア・ルケシーニ デュオ・リサイタル
5月21日(木) 19:00
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第6番
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲 イ長調
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
5月22日(金) 19:00
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番
シューベルト:即興曲(ピアノ・ソロ)
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第8番
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」
いずれもサントリーホール ブルーローズ
■問い合わせ:サントリーホールチケットセンター ●0570-55-0017