3月に紀尾井ホールでリサイタル
オール・プロコフィエフ・プログラム
「プロコフィエフの音楽に共感します」
今年、デビュー10周年を迎え、3月にリサイタルを行う。オール・プロコフィエフという挑戦的なプログラムで、30歳の“今”を聴いてもらう。
「プロコフィエフを演奏したかったのです。ずっと好きな作曲家です。ソナタの2番は17歳のときに初めて霧島国際音楽祭で演奏しました。お客様の反響も良く、弾いていて楽しかったのです。それ以来コンサートでよく弾いています。プロコフィエフは、他の作曲家のように苦労することなく演奏できました。すでにそこにいたのです」
プログラムは1番と2番のソナタに、よく知られたバレエ「シンデレラ」と「ロミオとジュリエッット」、そして「ピーターと狼」となじみのあるメロディー。ヴァイオリンとピアノのために編曲された「ピーターと狼」は世界初演版になる。
「お客様が飽きないようにプログラムを組みました。作曲家の魅力を伝えることに重点を置いたプログラムです。プロコフィエフの作曲は、オペラを書くことから始まりました。物語に直接触れていたのです。オペラやバレエを無視してはプロコフィエフの魅力は伝えられません。聴いたことのある親しみやすい作品も多いです。『シンデレラ』などは、ヴァイオリンのためだけに書かれた作品にはない魅力があります」
ヴァイオリン・ソナタ第2番はフルート・ソナタを改作して1944年、オイストラフで初演された。
「プロコフィエフが作り出すフレーズやリズムに共感するところが多いのです。フレーズやリズム1つ1つに個性の強さを感じます。たとえばソナタ2番の2楽章ですが、おもちゃ箱の中に人形がたくさんあって、1つ1つの人形は黄色やピンクなど違っていてカラフルです。音で聴いてもカラフルさが見えて楽しいのです。そして自分の意志がとても強いので、その作品が何を言いたいのか、メッセージ性が鮮明です」とプロコフィエフの音楽の特徴を話す。
桐朋女子高からチューリヒに留学、10年過ごし、ベルリンに移って5年になる。スランプを乗り越えたからこそ今があるという。
「6、7年前、弾けなくて悩んだことがありました。先生を変えて、積み重ねてきたものをゼロにする怖さがありました。そのリスクを負って変わらなければいけなかった。自信満々のタイプではないので、根拠がないと自信が持てないのです。スランプを乗り越えたからこそ、自分の演奏に確信が持てるようになりました。次の10年に向けて音楽家として深めていきたい」
5歳よりヴァイオリンをはじめる。桐朋女子高等学校音楽科を経て、チューリッヒ芸術大学卒業後、ハンス・アイスラー音楽大学ベルリンを卒業。上西玲子、辰巳明子、ブロン、ガヴリーロフに師事。2002年、メニューイン国際コンクール(ジュニア部門)第1位。06年、ダヴィッド・オイストラフ国際ヴァイオリン・コンクール第3位。08年、紀尾井ホールにて清水和音との共演でデビュー・リサイタル。15年8月、ダボス国際音楽祭に招かれる。15年よりピクテ・パトロネージュ・プロジェクトのアーティストとして活動。ベルリン在住。
デビュー10周年記念
滝千春 ヴァイオリン・リサイタル
3月8日(木) 19:00
紀尾井ホール(東京)
〈オール・プロコフィエフ・プログラム〉
バレエ音楽「シンデレラ」より「ワルツ」
バレエ音楽「ロミオとジュリエット」
ヴァイオリン・ソナタ第1番
交響的物語「ピーターと狼」
ヴァイオリン・ソナタ第2番
ピアノ:沼沢淑音
■問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ 電話:03-5774-3040