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vol.123 ◎札幌交響楽団コンサートマスター 会田莉凡

◎札幌交響楽団コンサートマスター 会田莉凡

オペラシティ「B→C」シリーズでリサイタル
「ショスタコーヴィチは鬼気迫ります」
オーケストラでは「みんなが自由に弾ける」を追求

 4月に札幌交響楽団のコンサートマスターに就任し、広上淳一指揮「英雄の生涯」のソロを務めて鮮烈な定期デビューを飾った会田莉凡。セイジ・オザワ松本フェスティバルのサイトウ・キネン・オーケストラでフル活動した後、10月18日には東京オペラシティリサイタルホールの「B→C」シリーズのリサイタルに臨む。日本初演曲のアデス「おとぎ話の踊り」やショスタコーヴィチの「ヴァイオリン・ソナタ」など意欲がのぞく。
 小澤征爾の奥志賀アカデミーに2010年から参加し、薫陶を受けた。「サイトウ・キネンには23歳の時、13年から出演しています。イウェイゼンの『トランペット、ヴァイオリン、ピアノのための三重奏曲』を共演する若林万里子さんは、サイトウ・キネンの同世代の友だち。遠い楽器なのに意気投合し、一緒にできるものを探していました。ヴァイオリンとピアノで弾く『リフレクション』のナッセンは、エキストラで参加していた都響での指揮を体験しています。武満徹と親交があった人です」
 メインにはショスタコーヴィチ。ルーマニア国際コンクールグランプリの経験から、エネスコの曲を弾きたい思いもあったが、バッハと組み合わせる現代曲は70年代以降の作品を基本とする「B→C」の企画コンセプトを尊重した。
 「私が向き合ってきたショスタコーヴィチは、弦楽四重奏曲の世界です。第8番を1年くらい勉強しました。ハーモニーから風景や状況が浮かび、鬼気迫ります。『ヴァイオリン協奏曲第1番は合っている。弾いてみたら』とよく言われます」
 8月の下野竜也指揮札響hitaru定期演奏会では、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲のソロを弾いた。京都市響のゲスト・コンマスも務め、エネルギッシュにスケジュールをこなしている。そして、言葉の端々からオーケストラ愛がのぞく。
 「協奏曲を弾いた直後は、砂川での円光寺雅彦さん指揮演奏会でした。会場は残響ゼロ。札響は若手が多く、フェスティバルオーケストラに似たところがあります。客席の熱気を受け止め、ベートーヴェンの交響曲第5番は一期一会の爆発的な演奏になりました」
 「ゲストで参加していたころ、札響の演奏会で『新世界』の第2楽章を単独で演奏した時があります。(名誉指揮者だった)エリシュカの音を感じました。こういう音を出すために学びたい、教えてほしいという思いが募りました。札響は、音響の優れた札幌コンサートホールKitaraとともにあるオーケストラです。Kitaraでの音を求め、自分たちの響きにしています。定期演奏会では先輩コンサートマスターの田島高宏さんと並んで演奏し、順にコンマスを務めます」
 理想とするコンサートマスターは、元NHK響コンマスの徳永二男つぎおだという。宮崎国際音楽祭で接してきた。
 「みんなが自由に弾けるようにしてくれます。実際も人に分け隔てなく接してくれる。自由という意味では、豊嶋泰嗣やすしさんも、小森谷こもりや巧さんも同じ。今回のサイトウ・キネンでご一緒した小森谷さんは、背中から『何をやってもいいよ』と伝えてくれました。テュッティがただ前に合わせようとすれば、音が細くなる。後ろの人が自由に弾けると、線ではない響きが生まれるのです」

Ribon Aida

1990年生まれ。桐朋学園大ソリスト・ディプロマコース修了。2010年第6回ルーマニア国際コンクール弦楽器部門第1位、全部門グランプリ。12年日本音楽コンクール第1位。宮崎国際音楽祭、サイトウ・キネン・オーケストラに毎年参加。トリトン晴れた海のオーケストラメンバー。10年より小澤国際室内楽アカデミー奥志賀に参加し、小澤征爾指揮の弦楽合奏でソリストやコンサートマスターを務めた。20年から京都市響ゲストコンサートマスター、22年4月から札響コンサートマスター。

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東京オペラシティリサイタルシリーズ「B→C」
10月18日[火]19:00 東京オペラシティリサイタルホール

ヴァイオリン=会田莉凡、ピアノ=田中麻紀、トランペット=若林万里子

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番、
ナッセン:ヴァイオリンとピアノのための《リフレクション》、
ペパン:オータム・リズム、イウェイゼン:トランペット、ヴァイオリン、ピアノのための三重奏曲、
アデス:おとぎ話の踊り(日本初演)、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ