©武藤章
NISSAY OPERA「ルチア」を歌う
コロナ禍で大幅な演出の変更で上演
「オペラの楽しみを見出してください」
コロナ禍の中で、さまざまな公演がキャンセルされる中で、NISSAY OPERA2020の「ルチア」は無事に上演にこぎつけた。このドニゼッティのベルカント・オペラの傑作を多くの人が待っていることだろう。とはいえ、タイトルは「ランメルモールのルチア」から「ルチア あるいはある花嫁の悲劇」に変わり、上演時間は休憩なしの90分と、大きくカットされている。
「ルチアの一人芝居のように、ルチアの頭の中で起こっていることのように描かれます。今までにないスタイルです。オペラという形は崩しませんが、演技をするのは私1人です」とタイトルロールを歌う森谷真理。
エンリーコは妹ルチアを、一族を救うためにアルトゥーロと結婚させたいが、ルチアはエドガルドと結婚の約束をしている。エンリーコはノルマンノと謀り、エドガルドは不実だとルチアに信じ込ませ、アルトゥーロと結婚させる。しかし、結婚式に現れたエドガルドは誠実だった。ルチアはアルトゥーロを刺してしまう。
森谷は「ルチア」を2007年にイスラエルで、10年にアメリカ・インディアナ大学と、2回歌っている。
NISSAY OPERA 2016 オペラ『後宮からの逃走』
撮影:三枝近志/提供:日生劇場
「2回ともトラブルがあり、今度はコロナ。でもちゃんと歌いたかった役です。彼女は最初から情緒不安定なところがあります。計画的でなく反射的に、相手が好き嫌いではなく自分の感情で殺してしまった。男の人を知らず、エドガルドにどう思われるかが心配な彼女の強い想いがそこにあります。一人芝居ですが、彼女の想いは現実味を持って表現していきたい。自分が納得のいくパフォーマンスをしたい。
血まみれになり、正気を失ったルチアが結婚の祝宴で歌う「狂乱の場」が聴かせどころだ。
「体力的に要求が多く、特に2幕は出ずっぱり、大変です。高音ばかりが注目されますが、中低音もあり、音域の幅が広い役です。日本ではベルカントものをあまり歌っていなかったので、ルチアを歌えて本当にうれしい。今回の舞台は挑戦です。この状況下だからこそ、オペラの楽しみをこの公演に見出していただけたら。最後に良かったね、と言われる公演にしたい」と話していた。
栃木県小山市出身、武蔵野音楽大学声楽科卒業、同大学院声楽専攻首席卒業後、渡米しマネス音楽院プロフェッショナルスタディーズコース修了。第5回ヴェロニカ・ダン国際声楽コンクール1位など。パームビーチオペラの「魔笛」夜の女王でデビュー、アイルランド・オペラの「トゥーランドット」リューで欧州オペラ・デビュー。日本では2014年、びわ湖ホールの「リゴレット」ジルダでデビュー。19年には「天皇陛下御即位を祝う国民祭典」にて国歌を独唱する栄誉に浴した。小山評定ふるさと大使。とちぎ未来大使。
NISSAY OPERA 2020 特別編
「ルチア~あるいはある花嫁の悲劇」
11月14日(土)、15日(日) 各日14:00
日生劇場(東京・日比谷)
指揮:柴田真郁 演出・翻案:田尾下哲
読売日本交響楽団
14日 15日
ルチア 高橋維 森谷真理
エドガルド 宮里直樹 城宏憲
エンリーコ 大沼徹 加耒徹
ライモンド 金子慧一 妻屋秀和、他
■問い合わせ:日生劇場 ☎03-3503-3111