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vol.64 指揮・ベルリン・フィル芸術監督兼首席指揮者 サイモン・ラトル

指揮・ベルリン・フィル芸術監督兼首席指揮者 サイモン・ラトル
©掘田力丸

ベルリン・フィル芸術監督としての最後のツアー
「ベルリン・フィルは音楽を演奏しなければ、 この世は終わると思っているオーケストラなんです」

 サイモン・ラトルが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と来日した。2002年から務めた芸術監督兼首席指揮者を17/18シーズンをもって退任するため、今回が日本へのラストツアーとなった。
 「ツアーに出かけますと、私たちの集大成を皆さまに聴いていただかなければという気持ちになるのですが、日本では、私たちはツアーの感覚を失い、家族に会いに来ているような感覚になるのです」
 来日公演では、定番の作品の他に珍しい作品も演奏してきた。
 「日本に来るたびに、何か新しいものを聴衆の方に提供できないだろうかと考えます。今回はオーケストラの前に立つ立場で、何を聴きたいかということからプログラムを考えました。真っ先にブラームスの交響曲第4番を思いつきましたが、この作品は私のキャリアを通して、とても身近に感じているもので、ぜひまた演奏したいと思いました。続けて、名曲ですが滅多に演奏されないラフマニノフの交響曲第3番を思いつきました」
 ラトルは在任中に多くの新機軸を作り出したが、その一つが現代作品の数多くの委嘱と演奏である。今回もチン・ウンスクの「コロス・コルドン」を演奏した。
 「私はベルリンでの最後の2年に、15曲の新作を委嘱しました。その中で、美しい曲を、韓国の偉大な作曲家のチン・ウンスクさんにお願いしました」
 そして、教育プログラムや演出付きのバッハの作品、ポップな印刷物、定期コンサート後の「レイトナイト」コンサートをするなど、ベルリンの音楽風景を変えてきた。

指揮・ベルリン・フィル芸術監督兼首席指揮者 サイモン・ラトル
©掘田力丸

 「私を(芸術監督に)選任してくださったのは、オーケストラの可能性をあらゆる方面に拡大するということがあったと思います。それで、モンテヴェルディから、昨日書かれた作品まで膨大なレパートリーを演奏してきました。就任した16年前には、ジョン・アダムズをレジデント・コンポーザーとして、1年間演奏して、レコーディングすることなど想像できませんでした。また、CD業界で問題が生じたときも、我々は演奏というメッセージを世界中に広げたい、そこでデジタル・コンサート・ホールを立ち上げました」
 2004年の初来日直前に「何百頭もの“人喰い虎”のおりを開けてしまった、また世界最大の弦楽四重奏団と出会ったと感じました」と初めてベルリン・フィルを指揮した時の印象を語った。
 「そのイメージは変わっていませんし、変わってもらいたくない。このオーケストラは触ると火傷やけどするぐらい、ホットなオーケストラです。何を言いたいかというと、音楽作りのクオリティーです。それは格別なもので、自分の仕事だからと演奏している人はいないのです。音楽を演奏しなければ、この世は終わると思っているオーケストラなんです」

Simon Rattle

1955年、イギリス、リヴァプール生まれ。ロンドンの王立音楽アカデミーで指揮を学ぶ、1974年、ジョン・プレイヤー国際指揮者コンクールに優勝。80年、バーミンガム市響の首席指揮者、90年に同響音楽監督に就任、81~94年、ロサンゼルス・フィルに首席客演指揮者、2002年より、ベルリン・フィルの芸術監督兼首席指揮者を務め、17/18シーズンで退任予定。2017/18年シーズンより、ロンドン響の音楽監督を兼任。

ここで聴く

ベルリン・フィル来日公演(終了)

11月23日(木・祝) ミューザ川崎
11月25日(土) サントリーホール

ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」
チン・ウンスク:「コロス・コルドン」
ラフマニノフ:交響曲第3番

11月24日(金) サントリーホール

R.シュトラウス:「ドン・ファン」
バルトーク:ピアノ協奏曲第2番(ピアノ:ユジャ・ワン)
ブラームス:交響曲第4番

■CD

「ジョン・アダムズ・エディション」(4CD+2BD)

ラトルは「もう1人のマリアの福音書」を指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、他
(キング・インターナショナル)KKC-9271/6