3月に東京オペラシティでリサイタル
モーツァルトとチャイコフキーでCDも
「2人の作曲家には歌が息づいています」
チャイコフスキー国際コンクールに日本人として初めて優勝したのが2002年6月。以来、内外で活躍を続けてきた。
「最初の10年はあっという間でした。やりたい曲を弾かせてもらってきたのはすごく幸せでした」
3月に原点ともいうべきチャイコフスキーとモーツァルトでリサイタルを開く。1月には同じ2人の作品を収録したCDをキングからリリースした。
「2人ともどの作曲家よりも音楽に歌が息づいていると思います。2人ともイタリア・オペラが好きでした。10代でチャイコフスキーを弾き始めたころは、沼に落ちていくような暗さが好きだったのです。たくさんの曲を弾くようになって、ちょっと太陽の光が入っているのが分かりました。同じロシアの作曲家でもラフマニノフよりもチャイコフスキーの方が太陽の光を感じます。ラフマニノフは男声のテノール、バス・バリトンという感じです」
リサイタルはチャイコフスキーの「四季」より3月「ひばりの歌」と6月「舟歌」(CDには「四季」全曲)やグランド・ソナタ、モーツァルトの「キラキラ星変奏曲」(CDも)とピアノ・ソナタ第12番などを弾き、またCDにはモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付」を収録した。
「『四季』を生かせるものとしてモーツァルトを選びました。今回のCDは、全体としてドラマチックな感情を表現するよりも、日常のささいな感情の変化を感じてもらえたら、と思います。前作のラフマニノフだと、もっとものものしい感情、自分から少し遠く感じてしまうのではないでしょうか。今作は誰もが感じる感情を表現しています」
四季の感じ方は日本人とロシア人では違う、という。
「日本とは季節がずれています。特に『3月』は違うかもしれません。日本では桜が咲き始める春ですが、ロシアではまだ冬です。でも12月の『クリスマス』は一緒でしょう。1月から12月まで全体の流れとして聴いてもらえれば」と話す。録音は1月から12月まで一気に弾いたという。
リサイタルでは「四季」からは2曲だけ。
「『四季』はお客様との距離が近いほうが伝わります。モーツァルトとチャイコフスキーを並べることによって、お互いが引き立つような演奏をしたいです。2人の共通点を感じて、自然にモーツァルトからチャイコフスキー、チャイコフスキーからモーツァルトと聴こえてくれたら」と話した。
3歳児のコースからヤマハ音楽教室に、1990年よりヤマハマスタークラスに在籍。
ヴェラ・ゴルノスタエヴァ、江口文子、浦壁信二に師事。第3回エトリンゲン国際青少年ピアノコンクールA部門第1位。
2000年3月、第5回浜松国際ピアノアカデミーに参加、ピアノアカデミーコンクールでアカデミー史上、初のグランプリを受賞。同年7月、シドニー国際ピアノコンクールにて第2位。02年、第12回チャイコフスキー国際コンクールで日本人として初めての第1位を獲得。東京藝術大学音楽学部早期教育リサーチセンター准教授。
上原彩子 ピアノ・リサイタル
3月25日(水) 19:00 東京オペラシティコンサートホール
チャイコフスキー:「四季」より3月「ひばりの歌」、6月「舟歌」
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第4番
チャイコフスキー:グランド・ソナタ、他
■問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ ☎0570-00-1212
上原彩子のモーツァルト&チャイコフスキー
チャイコフスキー:「四季」
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付」、他
(キング)KICC-1501