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vol.44 ピアノ 舘野泉

ピアノ 舘野泉

傘寿記念コンサートで4曲のピアノ協奏曲
「80歳、最初の挑戦 心を揺さぶる人生讃歌」と銘打つ
「演奏する不自由さはありません」

 毎年夏は1964年から住まうフィンランドで過ごす。インタビュー後、すぐに日本を った。
 「また9月に戻り、11月まで日本。12月はフィンランドに戻ります。向こうにいるのはだいたい4カ月です。日本にそんなに長くいるのですか、と言われますが、日本はいいところですから(笑い)」
 フィンランドで休暇を過ごしているのではない。ヨーロッパ各地でコンサートをこなす。2002年に脳出血で倒れ、右半身不随となった。「左手のピアニスト」として復帰後も年齢を感じさせない活動を続けている。80歳の誕生日の11月10日、「最初の挑戦 心を揺さぶる人生讃歌」と題し、左手のための4曲のピアノ協奏曲を一晩で演奏する。
 「60年間そういう生活をしてきて、休みはありませんでした。演奏家とはそういうものなのです。歩くことなど体の不自由さはありますが、演奏する不自由さはありません。演奏が衰えたとは感じていません」

ピアノ 舘野泉
©Akira Muto

 「舘野泉左手の文庫」が委嘱した池辺晋一郎のピアノ協奏曲第3番〝西風に寄せて〟。ウィーン・フィルのヴァイオン奏者で、舘野のシベリウス・アカデミーの教え子、ルネ・シュタールの「ファンタスティック・ダンス」、第1次世界大戦で右手を失ったヴィトゲンシュタインが委嘱したヒンデミットとラヴェルの作品だ。ヒンデミット作品はヴィトゲンシュタインは演奏せず、80年埋もれており、2004年にフライシャーのピアノ、ラトル指揮ベルリン・フィルで初演された。
 舘野は先にこのヒンデミットとシュタールの2作品を6月18日に第一生命ホールで初演している。
 「ヒンデミットは楽譜出版社から日本でも演奏してくれと頼まれていました。CDを聴いて楽譜を見ても分からない。練習は狭い部屋で音がぐちゃぐちゃになってしまう。それが、ホールで音が出たとたん、音が輝いて伸びていきました。シンプルに見えてリズムに仕掛けがあり一筋縄ではいきません。これだけすごい曲はなかなかない。時代が受け入れなかったのでしょう。4曲の中ではシュタールが一番難しい。シュタールはウィーンの伝統を受け継いでいます」
 ショパンやベートーヴェンら著名作曲家の編曲は弾かない。左手のオリジナルにこだわってきた。だから、多くが委嘱作品で「ばりばりの現代作品」。
 「南相馬市民文化会館の名誉館長をしているので、小学校で演奏します。子供たちは、かっこいいと喜んでくれますが、父兄はもうちょっと知っている曲を、と感想をいいますね」と笑った。

Izumi Tateno

1936年東京生まれ。東京藝術大学首席卒業。64年よりヘルシンキ在住。68年メシアン・コンクール第2位。81年よりフィンランド政府の終身芸術家給与を得て演奏活動に専念。2002年脳出血により右半身不随となるが、04年「左手のピアニスト」として復帰。06年シベリウス・メダル授与。左手作品の充実を図るため「舘野泉左手の文庫(募金)」を設立。08年旭日小綬章、文化庁長官表彰。12年NHK大河ドラマ「平清盛」テーマ曲のソリストをつとめる。南相馬市民文化会館名誉館長、日本シベリウス協会最高顧問。

ここで聴く

傘寿記念コンサート
舘野泉 80歳、最初の挑戦

11月10日(木) 19:00
東京オペラシティコンサートホール
指揮:高関健 東京シティ・フィル
池辺晋一郎:ピアノ協奏曲第3番
ヒンデミット:管弦楽付きピアノ音楽
シュタール:ファンタスティック・ダンス
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
■問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ 電話03-5774-3040

10月30日(日) 16:30
南相馬市民文化会館
■問い合わせ:電話0244-25-2763