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vol.107 ピアノ ダニエル・バレンボイム

ピアノ ダニエル・バレンボイム

16年ぶりに日本でピアノ・リサイタル
ベートーヴェンの後期三大ソナタなど
「文化をおざなりにしてはいけません」

 巨匠ダニエル・バレンボイムが6月、日本で16年ぶりのピアノ・リサイタルを行う。バレンボイム側はベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲のチクルスを希望したが、ホールが確保できないなどの状況から、全国で4回の公演となった。サントリーホールの2回は初期のソナタ第1番から4番と、後期三大ソナタ第30~第32番の2プログラム。大阪、名古屋は後期三大ソナタになる。オンラインで記者会見が行われた。
 「1960年に初来日し、長い時間が経ちました。日本が好きな理由を申し上げると、聴衆がコンサートというイベントに行くのではなく、音楽に対して真しな気持ちで向かい、音楽の意義を認めてくれるからです。コロナ禍の時期に大切なことは、文化や精神世界を決しておざなりにしてはいけないということです」
 7歳でデビューして以来の長いキャリア。10歳のときに、フルトヴェングラーから「バレンボイムの登場は事件である」と絶賛された。1966年に初めてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲の録音をし、昨年、78歳で前人未到の5度目の全集をリリースした。

ピアノ ダニエル・バレンボイム

 「8回リサイタルをさせていただけるなら全曲を演奏できたのですが。最後の3つのソナタは重要な作品です。ベートーヴェンが最後にここに到達したことが素晴らしい。集中力を持って聴いてほしい」
「バレンボイム=マーネ・スタインウェイ」という独自のピアノを使用している。ベルギーのピアノ製作者クリス・マーネ氏と共同開発したもので、低音弦が交差せず平行に張られることで、音の濁りを抑え、透明感を増している。また鍵盤は手に合わせ幅が狭くなっている。2台所有しており、そのうちの1台を持ち込み披露する予定だ。
 「5、6年になります。高音部は3本の弦が平行し、真ん中のドより下の弦はほぼ並行に張られています。音色が豊かなのはそれぞれの弦が独立しているからです。ホールの音響の違いは何の心配もしていません。ホールのサイズの違いは大きな問題ではありません。(5度目の全集の録音を行った)パリのブーレーズ・ホールもサントリーホールも特筆すべき音響を持つホールです」
 コロナ禍で生活の変化はあったかという質問に、「音楽に取り組むことに変化はありません。以前でしたら2、3年前に計画を立てましたが、今は計画を立てることが難しくなりました。来日を本当にすごく楽しみにしています」。

Daniel Barenboim

1942年、ブエノスアイレス生まれ。 7 歳でピアニストとしてデビュー。 52 年、イスラエルに移住。68 年、ピンカス・ズッカーマン、ジャクリーヌ・デュ・プレとトリオを結成。2020 年 には自身 5 度目となるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音をリリース。指揮者としては、ベルリン州立歌劇場音楽監督、ミラノ・スカラ座音楽監督などを歴任。22年 1 月には、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートへの3 度目の出演予定。99 年にエドワード・サイードとともに設立したウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を率いる。

ここで聴く

ダニエル・バレンボイム
ピアノ・リサイタル

6月2日(水)19:00 サントリーホール B
6月3日(木)19:00 サントリーホール A
6月4日(金)19:00 サントリーホール B
問い合わせ:テンポプリモ(TEL)03-3524-1221

6月7日(月)18:30 フェスティバルホール B
問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL)0570-200-888

6月9日(水)18:45 愛知県芸術劇場コンサートホール B
問い合わせ:中京テレビ事業(TEL)052-588-4477

A~最初のソナタ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1~4番
B~後期三大ピアノ・ソナタ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30~32番