バッハ国際コンクール優勝の若き名手
来年3月にHAKUJU HALLで無伴奏に挑む
「それぞれの作曲家の思いを伝えたい」
この7月、ライプチヒで、ヴァイオリン部門は4年に1度開催されるバッハ国際コンクールにおいて、日本人で初めて優勝、聴衆賞も受賞した。
「子供のころからバッハが好きでした。心にすっと入ってくるような感じがして、どう演奏すればうまく伝わるのか考えるようになりました。コンクールの課題曲は半分ぐらいがバッハでした。同時代の作品など日本でなかなか手に入りにくい楽譜もありました」
このコンクールのユニークな点は、ピッチどころか楽器自体が違うモダン・ヴァイオリンとバロック・ヴァイオリンが同じ土俵で戦うこと。3分の2ぐらいの参加者がモダン・ヴァイオリンだったという。
「素晴らしい審査員の方々ばかりで、純粋に音楽を見て下さいました。特に45分プログラムのセミ・ファイナルは初めて弾く曲ばかりできつかったのですが、本選は納得いく演奏ができました」
近年、研究、実践が進んだバロック音楽や古楽器の演奏法は、急速にモダン楽器の演奏法に取り入れられている。
「これからも演奏法は変わっていくと思います。バロック・ヴァイオリンは指の乗せ方を1グラム変えただけ、ビブラートの量をほんの少し変えただけで音が変わってしまいます。発音の種類がモダンの何倍もあります。しかし、モダン楽器ならではの新たな可能性を打ち出すことができるかもしれないとも思っています」
3歳からヴァイオリンを始め、スズキ・メソードを習った。こつこつとした練習はあまり好きではなかったが、音楽は常に好きだったという。15歳でデビュー・リサイタルを行った。並行して6歳からピアノを習ったことがいま、ピアノ曲からヴァイオリン曲のインスピレーションを得るなど役立っているという。
HAKUJU HALLのリサイタルのプログラムは、バッハやテレマン、イザイ、パガニーニなどすべて無伴奏曲を並べた。
「リクライニング・コンサートということで、初めてクラシックを聴く人などいろいろな方が聴きにきてくださると思います。イザイの第5番などあまり多く弾かれない曲もありますが、名曲も入っています。バッハの『シャコンヌ』があることで、ビーバーの『パッサカリア』の良さも際立つと思います」
あえてコンサートに足を運んでくださるお客様に感謝している。
「CDでも聴けますが、音楽を生で聴くことの良さがります。会場で音を浴びて、空気感を感じていただくことは本当にありがたい。それぞれの作曲家の思いを僕を通してお伝えできれば、と思っています」
1994年、千葉県出身。3歳よりヴァイオリンを始める。富川歓、中澤きみ子、ジェラール・プーレ、澤和樹、ピエール・アモイヤルに師事。第60回全日本学生音楽コンクール小学校の部、東京大会、全国大会第1位。15歳のとき王子ホールで初リサイタル。ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2014第2位。7月にライプチヒで開催された第19回バッハ国際コンクールで日本人初の第1位と聴衆賞を受賞。東京芸術大学2年。
3月6日(金) 15:00/19:30
バッハ:無伴奏パルティータ第2番より「シャコンヌ」
パガニーニ:「24のカプリス」より
エルンスト:シューベルト「魔王」による大奇想曲
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番
プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタより、他
第2弾のCD「宮田大/チェロ一會集」を発売
斎藤秀雄のチェロで最後の録音
「そのときにしか生まれない音楽を録音しました」
2枚目のCD「宮田大/チェロ
「2003年から弾いてきました。楽器の質は高くとても勉強になりました。やっとニュアンスが出せるようになりました。10月から上野製薬さんからお借りしたストラディヴァリウスを使っています。音圧があるというよりそぎ落とされた音が聴こえます。自分ではそれほど大きくないと思っても、周りにはよく聴こえるようです。音はこれから日々変わっていくと思います。楽器は道具ですから、弾いている人の音になっていきます」
CDの「一會集」というタイトルが目を引く。茶道から来た言葉で、幕末の大老井伊
「コンサートも一期一会のお茶の世界に似ている、と思いました。演奏は毎回違います。ピアニストと自分が感じたもので、そのときにしか生まれない音楽を録音しました。ピアノのジュリアン・ジェルネとは南フランスの音楽祭で知り合いました。音楽性は似ており、音楽作りにはジュリアンの空気感も影響します。ピアノとチェロは半分半分、音楽の流れを作るピアニストは重要です」
収録したのはフランクのチェロ・ソナタ、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」。フォーレ「エレジー」と、黛敏郎の名作「BUNRAKU」と尾高
「ジュリアンと初めて弾いたのもフランクです。名曲で、私も弾き込んだ曲ですが、本番では練習したものを追っていかないことが大事です。毎回チャラにして臨みます。それでも積み重なると頭の中のボキャブラリーが増えていっている感じがします」
CDの「一會集」の文字は、文楽の人形遣い、三世桐竹勘十郎に書いてもらった。黛の作品を弾くために、勘十郎に話を聞き、文楽を見に行った。
「見に行かないと分からないことがたくさんありました。女の人の声色も曲の中に表現されています。最初は色彩感がないイメージでしたが、フランスの油絵とは違う色彩感がありました」
宇都宮市出身。音楽教師の両親のもと3歳よりチェロを始める。第74回日本音楽コンクールを含む出場するすべてのコンクールに第1位。第9回ロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクールで日本人として初優勝。第6回斎藤秀雄メモリアル基金賞、第13回ホテルオークラ音楽賞受賞。桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースを首席で卒業。ジュネーヴ音楽院卒業、クロンベルク・アカデミー修了。チェロを倉田澄子、フランス・ヘルメルソンに師事。2014年10月より上野製薬から貸与されている1698年製ストラディヴァリウス"Cholmondeley"を使用。
宮田大/一會集
フランク:チェロ・ソナタ
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
フォーレ:エレジー
黛敏郎:BUNRAKU
尾高尚忠:夜曲
ジュリアン・ジェルネ(ピアノ)
(N&F)CD:NF25502 SACD:NF65502
宮田大/FIRST
R.シュトラウス:チェロ・ソナタ
ラフマニノフ:ヴォカリーズ、他
(N&F)CD:NF25501