イザイの無伴奏ソナタでリサイタル
直系の弟子にNYで師事
「全曲を弾き、ステップアップしたい」
ヴァイオリニスト、外村理紗が2月2日、イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタのリサイタルを開く。ニューヨークのマンハッタン音楽学校でイザイ直系の弟子に師事し、「イザイ」を身近に感じてきた。長年師事してきた原田幸一郎にも「今のタイミングでまとめて取り組むのはとても良い」と背中を押された。若手注目株として、真っ向勝負を挑む。
2018年の米インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで2位に。19年に伊藤恵のピアノで、シューマンのヴァイオリン・ソナタ第1番、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番、ショーソン《詩曲》などからなる意欲溢れるリサイタルを東京で開いた。「ステップアップするためにも、無伴奏を全曲弾く演奏会を開きたいと思いました。イザイは、小さいころから違和感なく自分に合った曲。メロディーのつくりや和声の進行がとてもしっくりきます」
イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタは6つの曲からなる。「第1番は、シゲティがバッハのソナタを弾いたのを聴いて感銘を受け、作曲されました。バッハにインスピレーションを得ています。第2番にはバッハのパルティータの引用があり、《怒りの日》が現われる。バッハから逃れられない葛藤の表現であると思います」
それにしても無伴奏の演奏会は一般には冒険的と受け取られ、若手のリサイタルはめずらしい。「イザイが一体として作曲したのだから、全曲を弾きたいという思いがあります。第3番はヴァイオリンが映える曲で聴きやすい。第4番は、弓を張って圧力で弾くクライスラーに献呈された曲。第5番は、好きです。夜明け前の静けさの中から、太陽が現れる。第2楽章では、田舎風の踊りが現われます。第6番は弾くのは難しいのですが、明るい曲。イザイはバッハの組曲をモデルとして、数週間で全曲を書いてしまいました。ヴァイオリンを熟知しており、弓順で音が短くなるようなところにはテヌートの指示が書いてあったりします」
東京音大アーティストディプロマコースを経てニューヨークのマンハッタン音楽学校で学ぶ。「米国を留学先に選んだのは、小林健次先生、原田先生、神尾真由子先生など、先生たちのルーツをたどりたいという思いがありました。基礎や技術を重んじる米国の教育を受け、しっかりとした演奏の土台を作りたいと思っています。こう表現するにはこのように弓を使う、といった教え方がとても勉強になります」
原田のほか、ニューヨークで師事しているルーシー・ロバートは、イザイの弟子。「イザイの音楽へのパッションがあります。私はイザイの孫弟子ということになりますね」と微笑む。
「いろんな国籍の人や人種の人が集まるニューヨークはとても好き。学校にはジャズ科もあり、ジャズのセッションに加わったり、いろいろ吸収しています。日本の良さも、日本から離れたから一層感じます。23年2月のニューヨークデビューでは、細川俊夫さんの《悲歌》を弾きました。能が出てきます。ショーソンの《詩曲》との組み合わせもよかったと思います」
(藤盛一朗)
東京都小平市出身。3歳よりヴァイオリンを始める。17歳でアメリカの第10回インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールに出場し、第2位を受賞。同年、ニューヨークで開催されたYoung Concert Artists International Auditionで優勝したことにより、マネジメント契約とニューヨーク、ワシントンでのデビューリサイタルの機会を得た。スラットキン、大友直人、広上淳一、山田和樹、鈴木優人、角田鋼亮らの指揮のもと、インディアナポリス響、東京フィル、東響、新日本フィル、神奈川フィル、関西フィル、札幌響、広島響などと共演。小林健次、原田幸一郎、神尾真由子、小栗まち絵、ルーシー・ロバート、チョーリャン・リンの各氏に師事。現在、マンハッタン音楽学校クラシック・ヴァイオリン演奏科にフルスカラシップ生として在籍している。日本音楽財団より、1715年製のストラディヴァリウス「ヨアヒム」を貸与されている。
2月2日(金)19:00 紀尾井ホール
イザイ:
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
第1番、第2番、第3番《バラード》
第4番、第5番、第6番
■問い合わせ:カジモト・イープラス TEL)050-3185-6728