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vol.2 ソプラノ 幸田浩子

ソプラノ 幸田浩子

CD「ふるさと~日本のうた」をリリース
「この道」「からたちの歌」などおなじみの名曲
「歌には優しいエネルギーが満ちています」

今月リリースされた6枚目のアルバム「ふるさと~日本のうた」は、日本語の歌曲、日本の歌ばかり19曲を収録している。「この道」「からたちの花」「赤とんぼ」「ペチカ」など山田耕筰の名曲の数々は、多くの人にとってかつて歌ったことのある思い出の作品だろう。ピアノ伴奏で自身にとって初めての日本の歌のCDを作ったきっかけは、東日本大震災。

「日本の歌は子供の頃から家族で歌ったり、大学で勉強したりしましたが、ウィーンとボローニャに留学して、オーストリアやイタリアの音楽が身近にありました。しかし、日本の歌を形にしたい、と思ったきっかけは、東日本大震災があり、音楽って何なんだろうと考えたことです。音楽にできることは少ないけれども、何ができるかなと考えました」

姉のヴァイオリニスト、幸田さと子とともに東日本大震災復興支援のチャリティー・デュオコンサートを毎年開いている。今年も3回目のコンサートが5月12日、神戸市で行われる。

ソプラノ 幸田浩子

「私が今できることは歌うことだけ。たくさんのチャリティー・コンサートに出演しました。最後にはいつも『ふるさと』を歌いました。会場のみなさまと一緒に歌ったり、子供たちと歌ったりしました。最初のころは、泣けて泣けて歌えませんでした。しかし、やがて歌うと大きな力がわいてくるような気がしてきました。この気持ちをみなさまと共有できたらいいなと思ったのです」
「ふるさと」はアルバムの最後に収めてある。その2曲前に「春なのに」が入っている。「春なのに、春なのに、何かがこぼれていくよ」と歌われるこの曲の作詞・作曲者は東京芸大の同級生、菅野祥子。菅野はウィーン在住で岩手県陸前高田市出身のメゾ・ソプラノ歌手。

「彼女は今までに作曲をしたことはありません。故郷にかけてあげる言葉が出ず、自分ではどうしてあげることもできないと、震災の10日後に曲を作ったそうです。ふるさとへの思いが詰まった素敵な曲です。この曲を聴くたびに、岩手、そして東北へと思いを巡らせる方がいつまでも続いてくだされば、と思います。」

このほか、山田一雄作曲の「もう直き春になるだろう」や菅野よう子の「花は咲く」(NHK復興支援ソング)など、どんなことがあっても冬の後に必ず訪れる「春」を意識させる。

「アルバムをレクイエムにしたくはありませんでした。私がいま一番感じている曲を選びました。歌には優しいエネルギーが満ちています」

Hiroko Kouda

東京芸術大学を首席で卒業。同大学院および文化庁オペラ研修所修了後、ボローニャ、ウィーンで研鑽を積む。カターニア・ベッリーニ大劇場「清教徒」等数々の大舞台で重要な役を演じる。2000年、ウィーン・フォルクスオーパーと専属契約し、「後宮よりの逃走」、「ファルスタッフ」等に出演。国内では新国立劇場、二期会等で、「ナクソス島のアリアドネ」ツェルビネッタ等を演じる。12年10月からBSフジ「レシピ・アン」にMCとしてレギュラー出演中。第20回エクソンモービル音楽賞奨励賞受賞。二期会会員。

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■CD
ふるさと ~日本のうた〜
この道、からたちの花、赤とんぼ、ペチカ、鐘がなります、
唄、ばらの花に心をこめて、中国地方の子守歌、他
寺嶋陸也(ピアノ)
(コロムビア)COCQ-85005

■公演
新国立劇場委嘱初演 香月修作曲「夜叉ケ池」
6月25日(火)〜30日(日)
原作:泉鏡花 演出:岩田達宗
百合:幸田浩子(25、28、30日)

■問い合わせ
TEL:03-5352-9999