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vol.28 ピアノ リーズ・ドゥ・ラ・サール

リーズ・ドゥ・ラ・サール

世界を駆けるフランス気鋭のピアニスト
「意識的にレパートリーを広げています」
ラフマニノフの全集プロジェクトが進行中

 フランスの若手ピアニスト。10代から活躍し、たびたび来日しており日本でもおなじみ。なにしろ9歳のときのリサイタルがラジオ放送され、11歳でパリ音楽院入学を認められる早熟ぶり。〝最後〟のコンクールが16歳だった。

 「フランスのコンクールには16歳まで参加しましたが、14歳で最初のレコーディングをしました。エージェントが付いて活動を始めていたので、国際コンクールを受ける必要がなかったのです。普通は16、17歳からコンクールを受け出すのでしょうが、私は幸運でした。若さゆえの不安よりも、録音することの喜びが大きかったのです。それは若さの特権でしょう(笑い)」

 祖母はピアノの先生だったが、音楽家の家ではなく、ずっとピアノが好きで弾いていただけという。自宅のピアノはおばあさんにもらったカワイ。今でもそれを弾いている。

「舞台の上で弾くと、聴衆との強いコンタクトを感じます。聴衆と感動を分かち合うという気持ちが、最初からありました。カワイは自分の感情に合う楽器です。自分の理想の音に近づけるためは、演奏を模索してさまざまな手法を追求し研究しますが、それにはカワイがいいのです。とても優れた楽器だったら、楽に理想の音が出せてしまい、練習になりません」

 最新CDは「子供の情景」などが入ったシューマン、その他、リスト、ショパン、バッハ、ショスタコーヴィチなど幅広いレパートリーになっている。

リーズ・ドゥ・ラ・サール

 「意識的にレパートリーを広げるようにしています。特定の作曲家の専門家になりたくないのです。コンチェルトのレパートリーは数えたことはありませんが、60から70曲でしょうか。確かにフランスもの、ラヴェルやフォーレ、ドビュッシーを弾くと、その繊細さなどを身近に感じます。しかし、私の音楽はそれだけではないのです」

 今回の来日で、デスピノーザ指揮兵庫芸術文化センター管と共演し、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を弾いた。いま、ラフマニノフのピアノ協奏全集を作るプロジェクトが進行している。

 「ラフマニノフを弾いていると、彼自身が天才的なピアニストだったことがよく分かります。私ももう少し手が大きかったらと思います。ピアニストならだれでも弾きたい、演奏していて楽しい作曲家です。7月にチューリヒで、最後に残ったラフマニノフの協奏曲第4番をライブで録音します。ファビオ・ルイジさんの指揮です。何度も共演していますが、彼の素晴らしさは、音楽に対する敬意、音楽のためにすべてを捧げ、とても謙虚なことです」

Lise de la Salle

1988年、フランス・シェルブール生まれ。4歳でピアノを始める。9歳で行ったリサイタルがフランス・ラジオで放送される。11歳でパリ音楽院に入学を許され、ピエール・レアシュに師事。首席で卒業し、パリ国立高等音楽院大学院課程でブルーノ・リグットに師事。ジュヌヴィエーヴ・ジョワ=デュティーユにも学ぶ。13歳で協奏曲デビュー。2004年、ニューヨークのヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディションで優勝。同年、初の日本ツアー。CDはnaïveレーベルで数多くリリース。

ここで聴く

CD
シューマン:子供の情景(写真)
アベッグ変奏曲/幻想曲
(naïve)V5364
リスト・ピアノ作品集
ダンテを読んで─ソナタ風幻想曲
ラクリモサ/バラード第2番、他
(キングインターナショナル)KKC-5178
コンサート
読売日本交響楽団
11月20日(金)、21日(土)
東京芸術劇場
オスモ・ヴァンスカ(指揮)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番