©Ayustet
王道のプログラムで1月27日にリサイタル
バッハ、ベートーヴェン、ラヴェル、ショパン
「原点に立ち返りました。みな素敵な曲です」
バッハの《シャコンヌ》、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番《熱情》にショパンのピアノ・ソナタ第3番、まさに王道のプログラムだ。
「今までは少し変わったプログラムを組むと思われる方もいると思いますが、今回は超王道のプログラムです。原点に立ち返りました。当時、とても素敵だな、と思うから弾いていた曲たちです。東京オペラシティでリサイタルをするならショパンのピアノ・ソナタ第3番で終わりたかったのです。デビューCDにも入れましたし、ロマン派以降のピアノ・ソナタの中で一番好きなピアノ・ソナタです。ショパン晩年の作品で、歌謡性や色彩が豊かでありながら大きな構築のある作品です。そしてショパンが持っている憂いは常に漂っています。ショパンが、私のソナタはこれです、という思いを感じます」と語る。
そしてベートーヴェンの《熱情》こそほとんどといっていいピアニストが演奏する。だから比較されやすい。阪田はパウル・バドゥラ=スコダに師事した際に取り組んだ曲。
「20歳前によく弾きました。バドゥラ=スコダのウィーンの自宅に通い、1日5、6時間、ベートーヴェンを習いました。12月で29歳になります。10年経ってみて、ベートーヴェンの魅力に新たに取り組んでみたい。みなさんよく弾く曲ですが、十人十色です。楽譜は1つなのに演奏者ごとに違います。さまざまな演奏に影響を受けることはありますが、最終的には自分で決めます。10年前に勉強していた当時に気が付かなかったこと、見落としていることがあります。自筆譜を見て、ぎりぎりまで勉強します。完璧じゃないからまた演奏するのです」
バッハの《シャコンヌ》はよく演奏されるブゾーニの編曲。《アダージョ》とあるのはオルガン曲《トッカータ、アダージョとフーガ》のアダージョを阪田自身が編曲した。
「これもブゾーニの編曲があります。オルガンの音をそのまま編曲しているので、少し音が多いと思いました。ヨーロッパの教会で感じる祈りのような作品です。コロナで演奏会がたくさん中止になった時期に、少しずつ希望をもちながらバッハに向き合いました。アダージョはブゾーニへのオマージュとして書きました。ブゾーニもバッハを尊敬していました」
「観客のみなさんと一緒の時間を過ごしたい」と話す阪田。名曲の数々が阪田の手によって、どんな生き生きとした姿を見せてくれるか楽しみだ。
2021年エリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門第4位入賞。16年フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位。第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて弱冠19歳で最年少入賞。クレムリン音楽祭では、オール・リスト・プログラムによるリサイタルをニコライ・ペトロフが「世界一のリスト」と絶賛。15年CDデビュー。東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校、及び同大学を経て、ハノーファー音楽演劇大学にて学士、修士首席修了、現在同大学院ソリスト課程に在籍。パウル・バドゥラ=スコダに10年にわたり師事。
2023年1月27日(金) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール
J.S.バッハ/阪田知樹:アダージョ
J.S.バッハ/F.ブゾーニ:シャコンヌ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番《熱情》
ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番
■問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ TEL)0570-00-1212