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vol.83 PMF2019首席指揮者 マリン・オルソップ

PMF2019首席指揮者 マリン・オルソップ
Photo:Adriane White

バーンスタインの愛弟子で29年ぶりに参加
「エネルギー、協調性、そしてバーンスタインが
残してくれたことすべて抱きしめて取り組みたい」

 パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)の第1回(1990年)に参加、以来、29年ぶりに札幌の地に戻ってくる。
 「強烈でした! 初めての日本で、自然の美しさに息をのみました。教育がどんなに大切であるかを語ったバーンスタインのスピーチ、武満徹、ロンドン交響楽団との出会い、そしてPMFオーケストラを指揮したこと。すべてが忘れられない経験でした」
 両親が音楽家で、小さい時からピアノを習い、その後6歳でヴァイオリンを弾くようになった。
 「9歳の時にバーンスタインが指揮をするのを見て、すぐに指揮をすることが、私がやりたかったことだと分かりました。バーンスタインはずっと私のヒーローでした」と初めての出会いを語る。その後、1987年、ドイツでバーンスタインが始めたシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭のオーケストラアカデミーで師事した。ユーチューブにバーンスタインから手取り足取り教わる姿が残されている。
 「PMFで過ごした時のある夜、私は、シューマンの交響曲第2番のフレーズからビートルズの歌を思い出すと話したら、バーンスタインは、ピアノの前に座って、そしてピアノを弾いて、私のためにビートルズのメドレーを歌ってくれたんです! その時、録画できたらよかったのに! 彼の音楽、それは、音楽の限界を超える革新と親しみやすさ、そしていつも私に語りかけてくれました。20年間、私はスイングバンドをもっていて、すべてのスタイルを包み込むバーンスタインの音楽は、いつも私の音楽精神に影響を与えていました」

バーンスタインとオルソップ
バーンスタインとオルソップ Photo:Walter Scott

 現在でこそ、多くの女性指揮者が活躍している。しかし、オルソップがキャリアをスタートさせた時代は、自分で困難な道を切り開くしかなかった。
 「今、多くの女性がこの分野に進出してきたことをとてもうれしく思います。それにしても長く、寂しい40年間でした! 2002年に日本人のビジネスマンで私のメンターである滝富夫氏の名前をとって、女性指揮者のためのフェローシップ・プログラムを始めました。『Taki Concordia Fellowship』は17人の優勝者がいて、みんな素晴らしい仕事をしています」
 今回のコンサートではプロコフィエフの「古典」、「ばらの騎士」組曲などを指揮する。
 「PMFは、本当に東のタングルウッドといえるぐらい成長してきました。若い音楽家が、目標とする人や師匠に出会えることは重要で、PMFはそれをあふれるほど提供していると思います。私が指揮をするプログラムは、私たちの人生を生き生きと描写する多様なものです。それぞれの作曲家を違った音の世界で作り上げていくスタイルに取り組んでいきたいです。エネルギー、協調性、そしてバーンスタインが残したことすべてを抱きしめて」

Marin Alsop

ニューヨーク、マンハッタン生まれ。ジュリアード音楽院とイエール大学を卒業後、バーンスタインに学ぶ。1989年、タングルウッド・ミュージック・センターでクーゼヴィツキー賞初の女性受賞者。2007年、ボルティモア交響楽団音楽監督。12年、サンパウロ交響楽団首席指揮者/音楽監督。13年、女性指揮者として初めてBBCのラストナイト・コンサートを指揮。19年9月にORFウィーン放送交響楽団首席指揮者に就任予定。キャブリロ現代音楽フェスティバルの音楽監督を25年務めるなど現代音楽にも熱心に取り組んでいる。

ここで聴く

PMF2019 ピクニックコンサート
7月13日(土)14:00 札幌芸術の森・野外ステージ

PMF GALAコンサート
7月14日(日)12:00 札幌コンサートホールKitara

PMFオーケストラ苫小牧公演
7月15日(月・祝)18:30 苫小牧市民会館
プロコフィエフ:交響曲第1番「古典」
R.シュトラウス:「ばらの騎士」組曲、他
■問い合わせ:PMF組織委員会事務局 電話011-242-2211