チック・コリアとNHK交響楽団とモーツァルト
ピアノ2台のアコースティック・デュオで公演
「チックの気持ちが熟したのだと思います」
昨年暮れはニューヨーク・フィルのニューイヤーズ・イヴ・コンサートに出演、1月は秋山和慶指揮東京響でショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番、2月には中村紘子の代役として山田和樹指揮仙台フィルに出演、ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」を披露するなど、クラシック・コンサートでもすっかりおなじみになった。
「クラシックの演奏を始めて12年です。1年に1曲のペースで協奏曲を覚えてきました。レパートリーは、モーツァルトが5曲、プロコフィエフの3番、ガーシュウィンなど11曲です。前よりクラシック・コンサートへの出演は忙しくなりました。忙しいせいで演奏が雑にならないように、気をつけなければいけない、と思っています。『パガニーニの主題による狂詩曲』は10回以上弾いていますが、やればやるほど難しくなります。曲が見えてくると、テクニックの足りなさが見えてきます。欲張ってあまり作り込まないようにしています」
5月、チック・コリアとともにN響で、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲を弾き、〝本職〟のジャズではピアノ2台のスタイルで全国ツアーを行う。チックと知り合ったのは1982年、バークリー音楽院時代。その後、96年、新日本フィルで、同じモーツァルトの協奏曲を演奏、これが初共演となった。
チック・コリア(左)と小曽根真
©Toshi Sakurai ©篠山紀信
「学生コンサートのためホールでピアノをさらっていたら、コンサートがあったチックが僕のところへやってきました。そのころ、私は誰よりも速く弾けて、オスカー・ピーターソンの〝クローン〟とまで言われ、何を弾いてもピーターソンのようになってしまっていました。しかし、レコーディングが決まっていて、自分の音楽を作らなければいけない。知らないことを勉強しなければ、とプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を聴き出しました。それがクラシックとの出会いです。でも、当時は今のように人前でクラシックを弾くとは思ってもいませんでした(笑い)」
チック・コリアとは1996年に共演し意気投合したものの、今回のツアーまで20年かかった。今ではプライベートでもつきあいのある大切な存在だ。
「チックが僕とやりたい気持ちが、今になって熟したのだと思います。当時の僕からは得るものがなかったのかも知れません。その後、『すごくピアノのタッチが大きくなったね』と言ってもらいました。私の音色が変わったことを見逃さなかった。チックは後輩のミュージシャンを惜しみなく讃えてくれる人間の大きさ、愛情の深さがあります。こちらもそれで自信がいただけるのです。モーツァルトが生きていたら、チックと弾くことを喜んでくれたと思います」
12歳の時にオスカー・ピーターソンの演奏を聴き、ジャズ・ピアノを開始。1983年、バークリー音楽大学ジャズ作・編曲科を首席で卒業。同年カーネギー・ホールにてソロ・リサイタルを開き、米CBSと日本人初のレコード専属契約。アルバム「OZONE」で全世界デビュー。近年はクラシックにも取り組み、デュトワ、ギルバート、尾高忠明、高関健らの指揮のもと、北ドイツ放送響、新日本フィルなどと共演。14年2月にはギルバート指揮ニューヨーク・フィルのアジア・ツアーに参加、成功を収めた。国立音大教授。
チック・コリア&小曽根真
ピアノ・デュオ プレイズ・アコースティック
5月19日(木) 19:00 サントリーホール
■問い合わせ:カジモト・イープラス 電話0570-06-9960
横須賀芸術劇場(7日)、盛岡市民文化ホール(10日)
長野市芸術館(18日)、三原市芸術文化センター(21日)
兵庫県立芸術文化センター(22日)、守山市民ホール(26日)
愛知県芸術劇場コンサートホール(27日)、アクロス福岡(29日)
http://kajimotomusic.com/
NHK交響楽団定期公演 指揮:尾高忠明
5月14日(土)18:00、15日(日)15:00
NHKホール
モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲
■問い合わせ:N響ガイド 電話03-5793-8161