9枚目のCD「Romanza」を3月にリリース
「後世に残したいヴァイオリンの名曲を」
6月には恒例のリサイタルを紀尾井ホールで
9枚目のCD「Romanza」を3月にリリースする。
「後世に残せたらいいなぁーと温めてきたヴァイオリンの名作が並びました」
シューマンの「ミルテの花『献呈』」(レオポルト・アウアー&吉村龍太編曲)、シューベルト=リストの「ワルツ・カプリース第6番『ウィーンの夜会』」(オイストラフ編曲)、ワーグナー「アルバムの
アウアー、オイストラフ、バッハの「G線上のアリア」を編曲したウィルヘルミ、クライスラーら、かつてのヴァイオリンの巨匠、ヴィルトゥオーゾが自ら演奏するために手にかけた作品たちだ。近年、演奏されることが少なくなった。
「レコードが廃盤、楽譜が絶版になった作品も多いです。シューマンの『献呈』は楽譜が絶版になっており、録音から聴音して譜面を起こしました。『トリスタンとイゾルデ幻想曲』は、オペラのいいとこ取りです。ワックスマンの息子さんから直接手作りの楽譜を購入しました」
また、「アルバムの綴り」は吉田の師アーロン・ロザンドが楽譜に残し出版した作品。個人的な思い出も詰まっている。
「編曲したウィルヘルミはすごいヴィルトゥオーゾでした。とてもヴァイオリニスティックな小品で、ヴァイオリンらしい音がします。ヴァイオリニストとして演奏できることが幸せです」
6月には毎年恒例のリサイタルを行う。今回で16回目。先の「アルバムの綴り」も演奏するが、メーンはプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番。
「プロコフィエフの作品の中でももっとも憂鬱な曲です。初演したオイストラフに『墓場に吹く風のように弾いて』と助言しました。皮肉や戦争のリアリティーも聴こえ、硬質的な美しさがあります」
プロコフィエフが映えるように、明るいモーツァルトの「ハフナー・セレナーデ」でプログラムはスタートする。後半はブロッホの「ニーグン」。即興という意味で、ユダヤ人の嘆き、悲しみが奏でられる。
「ショパンの『ノクターン第8番』をウィルヘルミが編曲した作品も弾きます。形式はありますが、いかに即興的に弾けるか、が大事です。今回のリサイタルのテーマは『とても美しいものは切ない』です」
東京生まれ。桐朋学園大音楽学部卒。英ギルドホール音楽院、米マンハッタン音楽院に留学。アーロン・ロザンド、江藤俊哉、滝沢達也らに師事。テレビ朝日「題名のない音楽会」などに出演。小中学生などを対象にした教育プログラム「ふれあいコンサート」シリーズの功績が認められ、平成20年度「関西・経営と心の会・奨励賞」受賞。今年3月、最新盤「Romanza」をリリース。桐朋学園芸術短大非常勤講師。
■CD
Romanza(写真)
シューマン:ミルテの花「献呈」
シューベルト:アヴェ・マリア、他
(ナクソス)NYCC-27299
3月23日リリース
■コンサート
トッパンチャリティコンサート
3月12日(土)14:00 トッパンホール
サラサーテ・ツィゴイネルワイゼン、他
■問い合わせ:電話03-5840-2222
吉田恭子 ヴァイオリン・リサイタルvol.16
6月3日(金)19:00 紀尾井ホール
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
ブロッホ:バールシェム組曲「ニーグン」、他
■問い合わせ:電話03-6431-8186